HSK北海道山林種苗協同組合

1.苗木の樹種について

当組合の苗木生産者が主に取り扱っている苗木は、北海道が定める「北海道林業用種苗需給調整要綱」に基づき、以下の6樹種(需給対象樹種)となっています。

カラマツラクヨウ・ニホンカラマツ

マツ科 カラマツ属(落葉高木)
学名 Larix kaempferi 英名 Japanese Larch

高さ20~30m、太さ60~100cmになる落葉樹。秋に黄葉する。道内には自生しないが、人工造林樹種として植えられる。

長さ2~4cm、幅約2mm。20~40枚がかたまってつくか、またはらせん状につく。
暗褐色で縦に裂け、鱗片状にはがれる。
1本の木に雄花と雌花をつける。雄花は卵形で下向きにつく。雌花は直立または横向きにつく。
球果 長さ2~3cmの広卵形。初め緑白色で、のちに黄褐色。

苗木つくり

秋及び春に播種し、1年生幼苗を春に床替し、2年生で出荷するのが一般的(苗齢1-1)

トドマツ

マツ科 モミ属(常緑高木)
学名 Abies sachalinensis 英名 Sakkhalin Fir

高さ20~30m、太さ60~100cmになる常緑樹。北海道の代表的な人工造林樹種。

長さ1.5~3cm、幅2~3mm。先は2つに分かれる。裏に白い気孔線がある。
灰白色。平滑でなめらか。
1本の木に雄花と雌花をつける。雄花は卵形で長さ約7mm。雌花は直立し、長さ2~3cm。
球果 円筒形で上向きにつく。長さ5~8cm。太さは2~3cm。分解して落下する。

苗木つくり

秋及び春に播種し、2年生幼苗を春又は秋に床替し、5年生で出荷するのが一般的(苗齢2-3、2-2-1)

アカエゾマツ

マツ科 トウヒ属(常緑高木)
学名 Picea glehnii 英名 Sakhalin Spruce

高さ30~40m、太さ80~100cmになる常緑樹。名前はエゾマツに似ており、幹がやや赤黒いことによる。

長さ0.5~1.2cm、幅約1mm。横断面は菱形。先はとがる。やや曲がっている。
暗褐色で縦に裂け、鱗片状にはがれる。
1本の木に雄花と雌花をつける。雄花は長さ約1.5cm。雌花は紫紅色。長さ約3cmで枝に直立してつく。
球果 長さ5~8cm。太さ約2.5cmの円柱形。枝に垂れ下がる。

苗木つくり

秋及び春に播種し、2~3年生幼苗を春又は秋に床替し、6年生で出荷するのが一般的(苗齢3-3、2-4)

スギ

ヒノキ科スギ亜科 スギ属(常緑高木)
学名 Cryptomeria japonica 英名 Japanese Red Cedar

高さ30~40m、太さ1~2mになる常緑樹。道内では高さ20~25m。太さ60~100cm。日本の代表的な有用樹。広く植林される。

短い針状。やや曲がる。先はとがる。小枝にらせん状につく。
赤褐色~暗褐色。縦に長く裂ける。
1本の木に雄花と雌花をつける。雄花は多数集まってつき、楕円形で長さ約5mm。雌花は球状で径約4mm。
球果 卵形をした球形。長さ2~3cm。初め緑色。熟すと褐色。

苗木つくり

秋及び春に播種し、1年生幼苗を春に2年連続で床替し、4年生で出荷するのが一般的(苗齢1-1-2)

グイマツ雑種F1

マツ科 カラマツ属(落葉高木)
学名 Larix gmelinii var.japonica × L.kaempferi 英名 F1 Hybrid Larch

グイマツ雑種F1は、サハリン,千島列島南部に分布する 針葉樹「グイマツ」を母親,本州中央部に分布する針葉樹 「カラマツ」を父親とする種間雑種で、グイマツより成長が早く、カラマツより 幹の通直性と材の強度が高く、そしてグイマツとカラマツより生存率が高いという特徴がある。

苗木つくり

秋及び春に播種し、1年生幼苗を春に床替し、2年生で出荷するのが一般的(苗齢1-1)

クリーンラーチ

マツ科 カラマツ属(落葉高木)
学名 Larix gmelinii var.japonica × L.kaempferi 英名 F1 Hybrid Larch “Clean Larch”

クリーンラーチはグイマツ精英樹の「中標津5号」を母親、カラマツ精英樹を父親とし、炭素を固定する能力が普通のカラマツより7~20%高いという特徴を持っているとともに、成長、ネズミの食害抵抗性、幹の通直性、材の強度にも優れている。

「クリーンラーチ」という名前は公募により決められ、「ラーチ」とは英語でカラマツを意味し、空気を浄化し、地球温暖化防止に役立ってほしいとの願いが込められている。

クリーンラーチの種子はまだ十分に採取出来ないため、さし木により苗木を生産している。

苗木つくり

1年生のさし木幼苗を春に床替し、2年生で出荷するのが一般的(苗齢1-1-1)

参考文献
新版「北海道の樹」(辻井達一・梅沢俊・佐藤孝夫 著 北海道大学図書刊行会)
北海道森林管理局ホームページより
地方独立行政法人北海道立総合研究機構 森林研究本部(林業試験場・林産試験場)ホームページより

育苗について~良い苗木ができるまで~

床づくり

床づくり
  • 床づくりは、石灰・堆肥散布→耕転→殺菌・殺虫剤散布→砕土→床割り→床上げ→基肥施用→床固の順が基本。
  • 灌水施設や暗渠などを整備するとともに、必要に応じて、客土による土壌改良や緑肥栽培、定期的な深耕などの集約的な土壌管理が必要。

まき付け

  • 秋まきは、一般的に10月下旬から11月上旬に実施しており、種子のまま土壌中で過ごす期間が長期になるため、病害に侵される恐れが多いことから一層の注意が必要。
  • 春まきは、融雪剤の散布や雪割などで融雪を促進し、融雪水の停滞箇所の排水に注意しながら、4月下旬から5月上旬までにまき付けを終了する。

床替え

  • 床替えとは、苗木を掘り取って他の床地に移植することで、苗木に十分な土地と陽光を与えて生育を盛んにし、根の形を整えるとともに細根の発生を促して、林地植栽が容易で活着の良好な苗木を育成するために行う。
  • 床替作業は一般的に、春の場合、遅くても5月下旬までに終了させるが、トドマツ、アカエゾマツは一時生長終了後、乾燥に留意しながら8月下旬頃の秋床替も可能である。

潅水

潅水
  • まき付床、床替床の苗木はまだ生長段階で、特にまき付床の稚苗は根が浅いため、旱害にかかりやすい。
  • 降雨の天気予報に注意しながら、苗床が乾燥し始めたら、早朝、夕方に灌水を行う。

除草

  • 苗木の育成中には、種々の雑草が侵入する。これを放置しておくと苗木の育成を阻害し、風通しを悪くして病害を発生させやすく、肥料分の浪費ともなる。
  • 除草は雑草が小さいうちに行うことが必要で、大きくなってから行うと手間がかかるばかりでなく、抜き取りの際に稚苗の根を損傷する場合がある。
  • 除草作業は、苗畑作業の相当量を占めており、省力化のため、除草剤を使用する場合が多くなってきたが、除草効果や苗木に与える影響を確かめながら使用することが必要。

病虫害防除

  • 床替床で病虫害に侵されると、活力が低下し、山出し後、林地で植栽した時の活着が悪い。また、病虫害の種類によっては、苗畑や造林で他の健全な苗木や造林木にも蔓延する。このため苗畑での病虫害防除は、予防を原則として時期を失しないように実施する必要がある。

追肥

  • 健全苗木を仕立てるためには生育時期に応じた施肥操作が必要。
  • 窒素、燐酸、加里の施用が基本となるが、窒素肥料については、樹種別に成長状況を見極めながら、2~3回程度の追肥を行うが、カラマツについては、冬芽形成の時期を遅らせないように、8月下旬以降の追肥は避ける。

根切り

  • 苗木の根を生長中に切断すると、切口周辺やその手前から新しい根を多数生ずるようになる。また根が切られることによって一般的に養分や水分の吸収が抑えられ、生長が抑制される。これを人為的計画的に行って根系を充実させ、徒長を抑制した健全な山出し苗木に仕立てられることができる。

掘り取り

  • 掘取ホークまたはトラクター牽引掘取機を使用して、根を傷めないよう掘り取りを行うとともに、苗木を長時間乾燥にさらすことのないよう、速やかに選苗、梱包作業を行う。

梱包・出荷

  • 選苗が終わった苗木は、まず根部と梢端部を揃えて20~50本ごとに小束を作り、根部を互に内部に突き合わせ、梢端部を外側にし、ムシロなどの梱包資材を使用し、縄等で結束する。
参考文献
「北海道林業技術者必携(上巻)」(社団法人北方林業会)